最近、高齢者の自動車事故が多いので、72歳の父も免許は返納して運転はやめてほしいのです。なのにいくら言っても「自分は大丈夫だ」の一点張り。母も「だって買い物に行くのに車出してもらわないと大変だしねえ」と、まったく気にしていない様子です。
【質問】72歳の父に自動車の運転をやめさせる方法は?
72歳になる父のことでご相談です。
最近、高齢者の自動車事故が多いので、父も事故を起こすのじゃないかと心配なんです。
父は運転が好きで、どこへ行くにも車で出かけます。
でももう高齢だし、免許は返納して、もう運転はやめてほしいのです。
高齢者の事故のニュースが出るたびに、「お父さんもこうなるかもしれないから運転は控えて」と言っても「自分は大丈夫だ」の一点張りです。
父が言うには、普段の買い物にも車が必要だし、趣味の釣りに行くにも車でないと無理だから、運転をやめることはできないのだそうです。
たしかに父の住んでいるところは、一番近いスーパーでも車で5~6分かかりますから、徒歩で行くのは大変です。
釣りにしても、家を出るのはまだ暗いうちですから、バスもありません。
車がないと生活が成り立たないと言われると、返す言葉がありません。
でも、もし事故の加害者になったらと思うと、毎日心配で心配で、いっそ車が壊れて運転できなくなってしまえばあきらめもつくのに、と考えてしまいます。
母に私の気持ちを話しても、「だって買い物に行くのに車出してもらわないと大変だしねえ」と、まったく気にしていない様子でイライラします。
自分ではまだまだ現役と思っている父に、免許を自主返納させる、あるいは運転をやめさせるいい方法はないでしょうか。
【回答】解決の鍵はお父さんの自覚ではなくあなたの頑張り
親の責任を子がかぶらなければならないかも
72歳のお父さんが、免許も返納せず、運転もやめようとしない。
それはご心配ですね。
実際にお父さんが事故の加害者になってしまったら、保険会社とのやりとりや被害者への対応など、高齢のご両親に代わってあなたがその後始末をしなければならなくなるかもしれませんし、賠償金にしろ、慰謝料にしろ、経済的な負担があなたにかかってくるかもしれません。
もし被害者が死亡する大事故にでもなれば、精神的にも大きなダメージを受けます。
あのときやめさせておけば、という後悔をあなたは一生抱え続けることになるでしょう。
そうなる前に、お父さんには車の運転をやめてもらいましょう。
とはいえ、車がなければ今の生活が格段に不便になる、それはよくわかります。
今できることを考えてみましょう
本来、車がなければ生活に支障をきたす社会がおかしいと思いますが、インフラが整うのを待っているわけにもいかないので、今できることを考えてみましょう。
まずは日々の買い物ですが、スーパーには毎日行かなくてはなりませんか?
たとえばあなたが週に1回運転して連れて行くことはできないでしょうか。
まとめ買いができるよう、冷蔵庫を大型にしたり、台所の収納を使いやすくしたりはできないでしょうか。
あるいはスマホを持たせて、ネットスーパーを利用することは?
自宅まで届けてくれますよね。
届けてくれるという点では生協などもありますね。
食料品だけでなく、洗剤やシャンプーなどの日用雑貨も取り扱っていますし、毎週のカタログを見るだけでも楽しいという人もいます。
実際にモノを見て買い物をしたい、というのなら、バスを使って行くことはできないでしょうか。
雨の日や疲れているときは行かなくても済むよう、どちらにしても買い置きのできる環境は整えておきたいところです。
買い物の荷物を持ち帰るのが大変なら、お届けサービスを利用しましょう。
いつも行くスーパーはそれがないというなら、飲料や洗剤など重いもの、日持ちがするものはあなたが買って届けるか、一緒に買物に付き添いましょう。
とまあ、ざっと考えつくだけでも、車に頼らない買い物の工夫というのはいろいろあります。
お父さんの住んでいる地域がどれほど不便な場所かは知りませんが、そこでも車を持っていない、運転しない人はいるはずです。
そういう人はどのように日々の買い物を済ませているのか、食料を調達しているのか、調べてみましょう。
釣り仲間に現地まで連れて行ってもらう
次に趣味の釣りに行くための車、ということですが、これは釣り仲間に現地まで連れて行ってもらうことはできないのでしょうか。
釣り船という楽しみ方もあります。
釣りに行く日を決めて、その前日はあなたが泊まって翌朝車で連れて行くというのもありでしょう。
つまり、自分で車を運転して釣り場に行かなくてもよい方法をあなたが考えるのです。
生活が成り立たないと言われて、返す言葉がないなんて言っている場合ではありません。
成り立たない、ではなく成り立つようにするのです。
それには、車を使わずに生活していくための具体案を、あなたがご両親の身になって本気で考えることです。
どうすれば日々の買い物が楽になるか、釣りを楽しむことができるか、釣りに代わる趣味はないか、あなたが情報を集め、時には買い出しを手伝うなど、ご両親のために時間を使い、骨を折ることです。
危ないからやめろと口で言うだけではだめなんです。
老いを認めたくない人に口で注意するだけではダメ
お父さんは自分の老いを認めたくないんですから。
子どもに心配をかけないよう、迷惑をかけないよう、運転をやめようという気持ちがないんですから。
はっきり言って、人生相談するぐらい悩んでいるあなたの気持ちを考えてくれない、あなたのお父さんはダメ親です。
お父さんの態度を変えられないお母さんもダメ親です。
そんな2人のダメ親を持ったあなたは、そういう運命だと宿命だと思って、親のために時間も労力も使うしかありません。
お父さんが車を手放しても困らないような環境を整えてあげましょう。
自分は忙しいから親のためにそこまでできない、と言うなら、ごきょうだいや親類、民生委員、ボランティア、福祉サービスなど、力を貸してくれそうな人、利用できそうな制度などを片っ端から調べます。
そんな大がかりな、と思うかもしれませんが、年老いた親の生活を支える、これは介護の第一歩です。
この先、親は衰えていく一方ですから、介護の体制をはやめに整えるいい機会だと思うことです。
運転事故だけでなく、たとえばご両親のどちらかが転んで骨折し、そのまま車椅子になるとか、杖が手放せなくなるとか、介護が必要になる日が突然やってくるかもしれません。
いざというときのために、介護についてはあらかじめ情報収集だけはしておくといいでしょう。
こうした環境整備が済んで、いよいよ車なしでもやっていけそうになったら、あらためてお父さんと話し合って、車は手放すか、あなたが鍵を預かりましょう。
まとめ
ということで長くなりましたが、結論としては、
あなたが車なしの生活の具体的な提案をする。
その場合、本人たちの頑張りや我慢を前提とするプランはたてない。
なぜなら、ご両親は年々体力、気力が低下していきますから、それでは長続きしないからです。
必要ならばあなたが生活のお手伝いをする。
協力してくれる人、利用できるサービスを探す。
介護は一人ではできません。
今のうちに情報収集をしておきます。
上記の準備を整えたうえで、ご両親と話し合って運転はやめてもらう。
世間話のついでに「運転やめてよ」というのではなく、きちんと話し合いの場をもうけて、できればあなた以外の人も同席してもらいましょう。
重大なことなんだ、とお父さんに自覚させるためです。
お父さんが、もう運転はやめようかな、と思い直す様子がちょっとでも見られたら、すかさず鍵を預かりましょう。
運転したくなってもできないようにします。
要するに、問題解決の鍵はお父さんの自覚ではなく、あなたの頑張りです。
今から早速取りかかってください。
以上、高齢者の運転事故のニュース出るたび「お父さんもこうなるかもしれないから運転は控えて」72歳父「自分に限って大丈夫だ」、でした。

村上 爾志乃

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